今日のコラムは連載企画、『カイトの物語』第11話です。重心児のパパさんである、小菊さんという方からいただいた文章を掲載しています。

あるとき、『息子からこんな目線で世界が見えていたとしたら』・・・と目線を変えてみたことをきっかけに、息子さんが何を感じて何を思って、何を伝えたいかがわかるようになってきたという小菊さん。

その思い、息子さんから感じ取った思いを発信していきたいとのことで、絵本屋だっこのコラムで<連載企画>として発信をしていってもらうことにしました。

初回の記事にて、小菊さんから発信への想いを伝えていただいています。まだ見ていない方は、以下のリンクからぜひお読みください。

<カイトの物語>第1話はこちら>>

<カイトの物語>をまとめて読みたい方はこちら>>


【連載<カイトの物語>】story13~あの夜~

僕たち家族は
薄暗いレールの上を
一歩一歩走っている。

まるで
汽笛が鳴らない蒸気機関車のようだ。

あの日の夜も

母さんは
机に向かって勉強してた。

みんなが寝静まった夜に

小さな明かりだけをつけて
教科書を読んでたんだ。

ぼくが眠ってからも

ずっと……

どれくらい勉強してたのかな。

やっと教科書を閉じた母さんは

「おやすみ」

って小さな声で言って

ぼくの横に
そっと横になった。

それから

どれくらいたったんだろう。

 

突然だった。

 

母さんの体が

動かなくなった。

 

父ちゃんは
二階で寝ていた。

母さんは
父ちゃんを起こしに行こうとした。

でも

もう階段を上がることは

できなかった。

 

『ヤバイ……』

『けいちゃん……』

『ヤバイよ……』

 

父ちゃんの名前を
なんども呼んだ。

 

起きあがろうとした。

 

でも

起き上がれなくなって

座り込んだ。

 

そして急いでスマホを握りしめて

隣の部屋に這っていった。

 

自分で救急車を呼ぶために……

 

そのあとも母さんは

玄関まで少しずつ

進んでいった。

 

玄関にたどり着いた頃

救急隊員さんがやってきた。

 

二階で寝ていた父ちゃんは

暗闇の中で

名前を呼ばれて

体を揺さぶられて

目を覚ました。

 

『お父さん』

『お父さん』

『すみません、救急隊員です』

 

父ちゃんが目を開けると

真っ暗な部屋の中で

見知らぬ男が

しゃがんでいた。

 

『奥さんが救急車を呼びました』

『一階に行けますか?』

 

隊員さんは

落ち着いた声で

そう言った。

 

『救急車?』

 

バタバタバタバタ

 

父ちゃんは凄い勢いで部屋を出て

一階に向かった。

 

玄関に横たわった母さんに

『どうした!!』

と言いながら近寄ると

母さんが

『静かにして』

『カイトが起きる』

 

そういって

部屋の中を指さしながら

 

『ドミサミド』

『忘れんように飲ませて』

 

僕の発作の薬の名前を

何度も繰り返した。

 

『ロミサ…………ト』

『かにゃす…………』

 

母さんの顔がみるみるうちに

こわばって

ロレツが回らなくなって

言葉にならない。

 

そして母さんは

グッタリとしてしまった。

担架に乗せられて

行き先の病院を告げて

救急車は

いっちゃった。

 

お父さんは僕の横にきて

静かに座ると

 

ボーッとしたまま

座ってた。

 

長い長いあいだ

座ってた。

 

僕は

隣に誰かいるのを確認して

安心して

眠った。

 

 

つづく

 

この記事を書いた人

小菊

昭和44年生まれ54歳。妻は昭和63年生まれの35歳。重心児の息子は平成27年生まれの8歳(小3)。息子は妻の連れ子で、息子が生後半年の頃に再婚し親子になる。息子の傷病名は、ウエスト症候群、重度発達障害、自閉症。3年前より、息子は入居施設で暮らす。コラムでは、「息子はきっと、こんなことを考えているんじゃないか」と感じてきた内容を、息子の視点からのストーリーとして掲載。


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