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【連載<カイトの物語>】story2~僕が父ちゃんのところに来た理由~

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今日のコラムは連載企画、『カイトの物語』です。重心児のパパさんである、小菊さんという方からいただいた文章を掲載しています。

あるとき、『息子からこんな目線で世界が見えていたとしたら』・・・と目線を変えてみたことをきっかけに、息子さんが何を感じて何を思って、何を伝えたいかがわかるようになってきたという小菊さん。

その思い、息子さんから感じ取った思いを発信していきたいとのことで、絵本屋だっこのコラムで<連載企画>として発信をしていってもらうことにしました。

初回の記事にて、小菊さんから発信への想いを伝えていただいています。まだ見ていない方は、以下のリンクからぜひお読みください。

<カイトの物語>第1話はこちら>>

<カイトの物語>をまとめて読みたい方はこちら>>


重心児カイトの物語2

【連載<カイトの物語>】story2~僕が父ちゃんのところに来た理由~

「カイト君!!
けいちゃんの所に、、、よく来たねー!!」

僕のお婆ちゃんが、初めて会った時に僕を抱っこしてそう言ったんだ。

「神様の使いだねー!!」

お婆ちゃんは、そうも言ったよ。

「なんで知ってんだろう」って思ったけど、まぁいいや。

お婆ちゃんが言ってることに、父ちゃんはピンときてないし、母さんはもっとだからね。

僕が病院で暮らすことになる話の前に、いろいろな出来事があるんだ。

僕が本当に伝えたいことをうまく話すために、家族の気持ちや父ちゃんのことを少しだけ話しておくよ。

退屈だったら時々、面白い話してあげるから。聞いてほしいんだ。

 

神様が、僕の思いは時が来るまでうまく伝えれないって言ってた。

僕から言葉を奪ってしまったから、特別な方法で伝えなさいって神様がいうけど

特別な伝え方が、人にとても大切な何かを考えさせて、人とは何かを真面目に考えるきっかけになるって。

たぶん それは 『愛』 だと思う。

僕がお婆ちゃんに初めて会ったのは、父ちゃんと母さんが結婚したすぐ後だから、産まれて10か月くらいの頃。

父ちゃんは産まれてすぐの僕を「この子をなんとかしてあげないと」ってカッコいいこと言って一緒に暮らし始めたんだ。

「カイトは心に穴が空いとる」

「子どもは自力では穴を塞げないから、今なら間に合うかも」

そんなことも言ってた。

酒の飲み過ぎだろ?! 変な父ちゃん。

 

父ちゃんは口でカッコいいこと言ってるわりには、だめ親父の模範生。お酒は浴びるように飲むわ、気は短いわ、気性は荒いわ、口は悪いわ、柄は悪いわ、良いとこあるの?
って感じだったんだよ。

まるでゴリラと暮らしてる感じ。

でも、誰の子どもになるかは神様と一緒に決めることができたんだ。僕はそんな父ちゃんが結構好きだったから、父ちゃんを選んだんだ。

良いとこなしの父ちゃんは、実は母さんとは2回目の結婚で、過去に3人の女の子を育ててたんだ。

いなくなった女の子たちと音信不通だった父ちゃんは、3度も自分で死んでしまおうとしたことがあるんだ。もしかしたら子煩悩だった故にダメ親父になったのかな?

死んじゃダメ。 だめだよ父ちゃん。

でも、3回とも僕が神様に頼んで、死なずに済むようにしてあげたんだ。

馬鹿正直なだけのお人よしな父ちゃんは、365日、朝も晩もいなくなった女の子たちのことを思って暮らした。

このままじゃあダメだなと思ったから、「なんとかしてあげなきゃ」って、僕が来てあげたんだけどさ、、、どこか僕たちは似てるのかもしれないね。

 

父ちゃんは一緒に暮らし始めてすぐに、僕に障害があるってことを見抜いたんだ。

母さんは初めて産んだ子どもだし、信じたくないって感じだったけど、、、。

父ちゃんは僕の泣き方ですぐに気づいたよ。

僕の頭の中で脳が「ウニュウニュ」て感じで、頭が気持ち悪いし痛いし、キーンって音がしたりするし、だから泣いてるんだけど、父ちゃんも母さんも、僕がなんでこんなに長い時間泣くのかがわからないんだよ。

だから、父ちゃんは「何かがおかしい」って思いながらも、僕を観察する毎日だった。

僕の泣き止むタイミングがおかしいって言ってた。

それに笑うタイミングもおかしいって言ってた。

父ちゃんの勘は当たってんだよな、僕は一日中癲癇の発作と戦ってた。

半年以上、それをうまく伝えれないでいたんだ。

突然やってくるからこわいんだよ。

何年たっても絶対に慣れない。

ホント怖いよ。

よく気づいてくれたよ、飲んだくれの父ちゃん。

空を見ながら飲んだくれてる父ちゃんは、先のことがよく見えてしまうんだ。

言ったとおりになっちゃうんだ。

ある日父ちゃんが、抱っこして僕に話してくれた。

『昨日夢を見た、末っ子の娘に何かあって心の穴が大きくなった、小さな胸の真ん中に大きな大きな穴ができた。そして穴の中を決まった方向に風と煙が走ってる』

『マジックショーで秘密の空箱を開けた時みたいにドライアイスのような煙がすごい速さで穴をくぐってる』

『もう間に合わないかもしれないな』

ときどきふざけて、変なこと言うけど
そのギャップが好きだし、ダメ親父かと思えば、すごく強くて 暖かーいしさ

父ちゃんは一度決めたら絶対にやるんだ。

どんな難関も蹴飛ばしてやってしまうんだ。

そしてまた飲んだくれるわけ。

なんで飲んだくれるのかは後々わかるかも。

さっき話したとおり、まだ伝えたいことが伝えられない僕はいつも、こんな父ちゃんのそばで『成長しながら、親子で頑張って生きていこう』ってずっと思ってた。

 


(ここで少し、当時の状況と親の気持ちについて……)

「早く医者に調べてもらって、本当の現状を把握することがこの子のためになる。
希望的観測で時を無駄にしては、治療できるものもできなくなってしまう。
しんどいけれど、親が早い対応を取らなくて誰が急いでくれる。
もし何か大変な状態になっているとしたら、早く救ってやるべきだ。
のんきに様子を見るなんて大人の勝手な言い分でしかない。
あの時もっと早く医者で検査していれば...の結果は『取り返しのつかない後悔を呼ぶだけ』『俺たちが臆病になってどうする、立ち向かえ』」

カイトの父親になった私は 「迷うことなく」そう思った。
それは過去に『様子を見ましょう』という医師の考えとは裏腹に、娘を命の危険にさらした経験があったからです。

しかし、このことが、自分の弱さを思い知る始まりでもあったのです。

すでに人生のどん底と言える状態で、自分が嫌いで打ちひしがれていたのに、それとは比べ者にならないほど自分の心の弱さをこれでもかと突きつけらで心がボロボロになるとは想像もつきませんでした。

この頃のカイトの見た目は、不思議なくらい健康そのものでした。

赤子が火が付いたように泣き出すのは珍しいことではないが、以下のようにおかしいと感じる部分がたくさんありました。

泣き出した瞬間の瞳が、どこを見てるかわからない目をする
どうあやしても、落ち着く感じがなくて、呼びかけ 語りかけ の効果が非常に弱い。
普通にあやしてすんなり泣き止んでくれることも随分あります。

②時々安心したように泣き止むが、すぐに泣きだす(泣いた原因が不明)
泣き方が勝手にひどくなっていく、勝手に弱まっていくといった感じでした。
泣き止み方が分からないのは健常児にもあります。

③泣き止むタイミングをよく観察していると、あやしている内容と少しずれたタイミングで泣き止む
非常に小さい変化ですが、わずかにずれるんです。

④そのずれる部分だけを集中して観察をすると、小さいですがおかしな目つきをしたりおかしなアクションをしている

⑤目が一瞬、ヨリ目になったり、焦点があってないことが数秒だけある

⑥目が上のほうを見ることが多い

⑦泣いた後は、へらへら笑う、、、がパターン化している

⑧泣いた後にへらへら笑うときはよだれが多めに垂れるように出続ける

便秘気味な体質なのは分かっていたので、お腹のマッサージ&浣腸で、うんちを出してやると機嫌が直る時もある。
抱っこして背中、お尻と腰あたりをトントンしてやるとおさまる時もある。

私はカイトに出会うまで障害児を抱っこしたことさえなく、学生時代の養護学級で見た程度の知識しかありませんでした。

健常児のそれと似たグズリかた、障害児の特徴、両方入り混じった状態が続き、混乱、憶測、不安で毎日が過ぎていきました。

夫婦の間では、、、、

「健常児の表現が確実にあるのに乳幼児検診も待たずに障害の検査、検査ってなんでそんなことばかり言うの?!」

「検査の何が悪い」

と、喧嘩が絶え間なくなりました。

私は、これが行方不明になった娘たちならどうする? と自問して、カイトにもそれと同じようにしてあげようといつも心がけていました。

『親子になる努力』の段階だったと言えるかもしれません。


 

ここから父ちゃんのダメ親父っぷりが全開になるんだけど、ダメ親父にしては「何がどうなってるかわからんけど、コイツをなんとしても、どうにかしてあげんといかん!!」
と、言うことはカッコいいわけ。

そう言いながら、何に怯えてるのか腹を立ててるのか、酒ばっかり飲んでんだなー。飲んだくれってああいうこと言うだろーなー。母さんかわいそうーって思ってた。

飲んだくれてばかりの父ちゃんは、きっと幸せの再出発を夢見ていろいろ想像してたのに、想像っていうよりは想定外の事態になりそうで、父ちゃんだって不安だったんだよ。きっとね。

僕にはわかるんだ
父ちゃんのことはなんでもね、、、

僕聞こえてたんだ・・・・父ちゃんの独り言。

『はーーーっ!! 俺には絶対に無理』
『しんどい こんなの!!』
『今ならまだ間に合う、結婚をなかったことにしてもらおう』
『さすがに誰も責めはすまい』
『なんで俺の人生はこうなんだ』

僕 神様に 頼んどけばよかったな

『声だけは取り上げないで』・・・・って

つづく


この記事を書いた人

小菊

昭和44年生まれ54歳。妻は昭和63年生まれの35歳。重心児の息子は平成27年生まれの8歳(小3)。息子は妻の連れ子で、息子が生後半年の頃に再婚し親子になる。息子の傷病名は、ウエスト症候群、重度発達障害、自閉症。3年前より、息子は入居施設で暮らす。コラムでは、「息子はきっと、こんなことを考えているんじゃないか」と感じてきた内容を、息子の視点からのストーリーとして掲載。


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