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【連載<カイトの物語>】story4~僕の世界が見えたよ~

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今日のコラムは連載企画、『カイトの物語』第4話です。重心児のパパさんである、小菊さんという方からいただいた文章を掲載しています。

あるとき、『息子からこんな目線で世界が見えていたとしたら』・・・と目線を変えてみたことをきっかけに、息子さんが何を感じて何を思って、何を伝えたいかがわかるようになってきたという小菊さん。

その思い、息子さんから感じ取った思いを発信していきたいとのことで、絵本屋だっこのコラムで<連載企画>として発信をしていってもらうことにしました。

初回の記事にて、小菊さんから発信への想いを伝えていただいています。まだ見ていない方は、以下のリンクからぜひお読みください。

<カイトの物語>第1話はこちら>>

<カイトの物語>をまとめて読みたい方はこちら>>


重心児カイトの物語4「僕の世界が見えたよ」

【連載<カイトの物語>】story4~僕の世界が見えたよ~

父ちゃんは、僕が難病と障害を持ってるってわかって

【僕を育てるのをやめようとしたんだ】

父ちゃんは、半分以上あきらめて、、、、というより

完全にあきらめてた。

そして

『知っていれば結婚してなかったかもしれない』
『たぶん障害か何かがありそうな子を育てるなんて』
『誰が聞いても、そりゃそうだろうと納得してくれるはずだ』
『後になって、やっぱり無理だと言いたくないので、今無理だと言うんだ』

って おばあちゃんに報告したんだ、、、

それまでお婆ちゃんに報告なんか、ろくにしたことないくせに、、、
なぜかこの時は報告する、、、

おばあちゃんは、父ちゃんに
こう言った

『ふざけたこと言いなさんな』
(方言)
『その子を見捨てたら、お前を一生 絶対に許さない』
『ふざけるな』

父ちゃんは、少年時代から婆ちゃんの言うことなんか聞いたことがない人で、
そうやって生きてきたから 婆ちゃんから叱られるのなんて慣れっこ

けど、、、父ちゃんは

婆ちゃんに返事もしないで電話を切って
涙を流しだした、、、

 

父ちゃんはそのことがあってから、人が変わった
抱っこした僕に何回も何回も
こう言った

『どうしよう。どうしよう。情けない父ちゃんでごめんな』
『病気だろうと障害だろうと、俺の子や、』
『他のお姉ちゃんたちとおんなじ父ちゃんの子』
『絶対お前は父ちゃんが守ったる』
『お姉ちゃんたちと同じに、、、いや!! 男の子やからそれ以上に育ててやる』

『カイトは俺の子や、安心せい!!』
『の~カイト父ちゃんがついとる!! の~! の~!』

何度も 方言でいうんだ
『の~!!  の~!!』 うるさいよ父ちゃん~

昔の人の言い方で言えば、父ちゃんは竹を割ったような性格で、瞬間湯沸かし器な人
だけどやるとなると徹底的にやる人

そんな父ちゃんでも
僕のことで本当に弱ってたんだと思うんだ

父ちゃんは婆ちゃんの一言で目を覚ましたんだ

娘たちの1人がカイトと同じ状態になったら??
俺一体何やってんだ!!
答えは一つじゃないか!!
何やってんだ!!

ってぶつぶつ言ってた

でもさ……中途半端が大嫌いな父ちゃんはとことんやるんだけど、
何度も心が折れそうになるんだ……
わけわかんないだよね、、、中途半端嫌いなのに心が折れる……
全然だめでしょうよ

障害児を育てるって 健康な子と何がどう違うのか
それは後で教えてあげるよ

やらね~って決めたら飲んだくれるのは変わらないけど

とにかく父ちゃんは変わった

 

そして僕は、まだこの時点では何一つ状態がはっきりしなかったから
この頃から健常児の保育園に行くことになるんだよ

でもね……
【健康な子の保育園は病気や障害がある子を預かることはできないんだ】

1才の検診の時に、発達が遅いかもしれないと言われたんだけど
父ちゃんはずっと前から僕の異変に気付いてた
なんでそんなに早く気づくことができたのか、、、

父ちゃんは、とにかく子どもの心を掴む名人

父ちゃんは僕が赤ちゃんの時から、床に座って
右足と左足の隙間に僕を スッポリ と挟んで床に座る

そして、ボールペンや割り箸や、棒状のものを拾っては いろいろなものをポコポコポコポコ叩くんだ
とにかくなんでも ポコポコ叩いて回る

実は僕の気を引く音を探してる 【仲良くなる音源探し】なんだって

見て喜ぶものは、それが目の前にないと楽しめないけど
音はね どこにいたっていつでも出せるからね
面白くて、楽しい音は どんな時も笑顔にしてくれる

『コンコン』『ゴンゴン』『カンカン』『ガシャガシャ』『キンキンキン』

家の中は カンカン ポンポン  キコキコ いつもおかしな音がしてる

音がなってないときは、とうちゃんは僕が すっぽり 収まってる足を ゆ〜らゆ〜ら
揺らすんだよ
早く揺らしたり、ゆっくり揺らしたり、いろんな揺らし方をしてくれる

同じ動きを繰り返したり、長い時間やっても疲れないのは、手より足だからさ
足が疲れたら、すぐ近くに手があるし、
だるくなっても、手より足のほうが回復が早いでしょ?
それに長い時間、たくさん触れて遊べるのが足なんだって
だから僕はいつもいつも父ちゃんの太ももに挟まれてた

ずっと触れていられるし、仲良くなる一番の近道って
父ちゃんは言うよ

『子どもの兄弟で遊ぶときは、同じことするんじゃ
大人だから、こうしなきゃいかんとか、大人らしくとか、ちゃんととか、そんなことし
とるから同じ目線になれんのじゃ』
『愛情で接するのと、子どもの心を掴むのは別問題じゃ!』

訳の分からない父ちゃんの言い分を聞きながら
僕は……

また酒くせ~~っ父ちゃん!!
あっち向いてしゃべってくれよ~~!!

かあさんに言っちゃうぞ~
本当はお酒飲みながら、実は
とっても長い間、子どもをみてるように見える唯一の裏技だって 父ちゃんが言ってたっ
て……

父ちゃんが言うことは何が本当で何が冗談なのかわからないよ
でも僕は知ってる

どちらも本当で、必ず意味があってしてることを

発作が起きても倒れずに済むし、
眠くなったらそのままお腹の上でねれるし、
揺れたり、面白い話ししてくれるし、いろんな音も聴かせてくれる

何より 長い時間いられるんだ

お気に入りの場所だし
【そばにいるよって安心するんだ】

僕はず〜っとそうやって育ったから
【今でも父ちゃんの足に挟まれてるのが一番好き】

音がしなくなったな~って思ったら
今度は口でいろんな音を出す

あいうえお をいろんな言い方したり ほっぺを鳴らしたり 鼻をブーブーしたり
父ちゃんは考え付くオト鳴らしを延々と続けた

朝起きたらコンコンカンカン
お仕事から帰ってきたらポンポコポンポコ
お風呂に入ると、チョロチョロ

お風呂でもご飯以外はず~っとね

音を鳴らすのが疲れたら、今度は延々と僕に独り言を聞かすんだ
一人漫才や落語? みたいにね

 

僕は興味があるおもちゃがあんまりなくて

退屈だったから、ちょうどよかったんだけどね

父ちゃんがやってた音源探しにはこんな意味があるんだって

おもちゃ:音に対する興味の持ち方 → 興味をもつ音が非常に少ない
音がした時の反応 → 音が鳴る方向を見ずに反応する
目の動き → モノやオトを探そうとしない
振り向き方:タイミング → 振り向きが少ない、遅い
おもちゃに触れる時の触れ方 → 触り方を考える、撫でるようにもしくは叩く
遊び方 → ワンパターンな動きのみ、繰り返す
指の動き → 人差し指で引っ掛けること以外はうまくいかない
つかみ方 非常に緩い、手のひらで動かそうとするかワシ掴みのみ
離し方 → 掴んではポイ の繰り返し
興味が変わるタイミング 手が届かなくなると別のものに移る

父ちゃんなりに僕を観察するためにやってたんだ

ある日……

『お~っ!!!』
『これか!!!』
『よっしゃよっしゃ!!!やったぞ~!!!』
『ついにやった!!! ほら見ろ~!! 絶対にあきらめちゃダメなんだ!!!』
『やったやった!!! カイトよかったな!!! 父ちゃんにまかせんしゃい!!』
『どんなもんじゃ~! 特許じゃ~特許じゃ~!!』

父ちゃんが僕を抱っこして、大きな声で言った

怪獣みたいに、そしてゴリラみたいに言う

うるさい!!! 父ちゃん!!!
だけど、気づいたら僕も一緒にほっぺをくっつけて笑ってた

手には、父ちゃん手作りの カイト専用おもちゃ

そして僕は、必死なってそのおもちゃで遊んだ
周りに並んでる 買ってきたおもちゃには目もくれずに

僕がモノを、人差し指でひっかけて チョコッと動かしてはまた ひっかける姿を見て、父ちゃんがひらめいた
いろんなモノを買ってきてはテストしてた
ついに 大ヒット作が出たんだ

それが、これ

【百均のおもちゃで小さなボーリングのピンのおもちゃ「約10個」を釣り糸で結んで
繋げて 数珠繋ぎ】

ここからは父ちゃんがどんどん頑張っちゃう
ありとあらゆるものを数珠つなぎにする
結ぶのも 釣り糸は口が切れそうだとか 布だとヨダレで臭くなるとか 博士みたいに
なるんだ

布の紐で結んだおもちゃを僕からとると 父ちゃんが クンクン匂う
そして、ゴリラみたいに足をバタバタさせて、床にドンドンして

『くっさ~ぃ!!!』
『うわ!!くっさっ!!』

『コリャいか~ん!!変更変更っ!!』

って言いながら、何度も匂っては繰り返す

意味わかんない、臭いのにまた繰り返し匂ってさ……臭いって言いながら
とてもやさしい顔だし、そのたびに僕を ギューッてして

ほんとにゴリラなんじゃないの?  この人………………

実はね、このフレーズが僕の笑いスイッチ第一号
今でも 『くっさ!!』『うわっ!!』 て聞くと、僕は爆笑してご機嫌になる

お話の中で後から出てくるけど
とっても小さいことがきっかけになって
それをキーワードにして繋げていく

そうすると子どもを見る目線が、今まで思いつかなかった目線があることに気付く

子どもと同じ次元と、高さで、新しい目線で見てみると
障害がある子どもの秘密や仕組みのようなものが見えてくるんだよ

僕は 1歳検診では 『様子を見ましょう』ってことで

問題なしだったんだ

1歳半検診でお座りや 歩くことができなかったから
『発達障害リハビリ専門の病院にかかってみますか?』
って言われた

進めてくれた先生は
誰もが見てわかる お座りや歩くこと に対して言ってたから
父ちゃんは  『どこを重要視して見てるのかまったく分からないし気づいてもない』
って 怒ってたけど そこへ行ってみることにしたんだ

専門の病院には ウエスト症候群を研究してる有名な先生がいたんだ

そのころ僕は、お座りして遊んでいるときに
【こっくり】 って とても小さな 【お辞儀遊び】 みたいなことを、よくしてたんだ
けど
それを先生に診てもらうと

【よくある感覚遊びだね】  って言ってた

父ちゃんは ものすごく怒ったよ

『これは遊んでるんじゃない、何かが違う』
『はっきり言えない状態だから言わないのか?』
『ここに来た意味がない 想定される 範囲を広めないと 様子を見ている間に
進行する』
『その間この子は苦しむんだぞ!!』

って すっごく怒ってた

僕は言葉が出ないから言えなかったけど

【お辞儀遊び】 は ≪ウエスト症候群の発作≫ だったんだ

 


……父親の心境……

この頃の説明は難しいが、息子の発達に何か異常があると確信していたのと、その異常の程度を知りたかった。
また、早く何かの情報を掴めば解決策が出るはずだと考えた。

手を尽くしてカイトが好きなものを早く見つけてあげよう、、、絶対にあるはずだ

そうしないといけない気がしてならなかった。

『成長が少し遅れてるだけで、後からグンと成長するに決まってる
一つ一つ疑問を潰していけばいいんだ』

今、できることを精一杯やっておかないと後悔するという衝動に突き動かされて……。

しかし現実は……決して甘くなかった。

来る日も来る日も 音源探し を繰り返していくうちに、
【興味を示すものが限られている気がする】
【喜んだ時の 起伏が極端】
自分なりの分析に少し自信がついて、『やはり何かある!!』
と強く感じるようになった。

私は、どの医者に頼ったらいいのか悩み、県外も視野に入れたりして途方に暮れた。
どうしても 『様子を見る』という行為が納得がいかず悶々としていた。

そんなある日、
セカンドオピニオンならずサードオピオンのさらにもう一つ上の4回目オピニオンで、ウエスト症候群の確率が高いと告げられる。

 


 

父ちゃんは僕の状態を早く知りたかった
前に進むために

でも本当のことが分かると、落ち込んで声も出なかった
何も考えれなくなった
そして、心がまた折れた

【保育園にせっかく通いはじめたのに】

神様……僕どうなっちゃうんだろう
神様……父ちゃんだいじょうぶかな~

 

つづく


<今回のキーワード

保育園
音源探し
心を掴む
子どもと同じ次元
、、 高さ
、、 目線
、、 新しい目線
安心
長い時間接触した状態でコミュニケーション
目で見えるもの

指先
一緒に笑う
理想と現実
頭で考えずとにかくやってみるかやらないかの違いは大きい
変更、改良、改造は納得がいくまで甘んじない妥協しない
好きな場所
好きなフレーズ
一つで満足しない、まだあるはずと探し続ける

 

この記事を書いた人

小菊

昭和44年生まれ54歳。妻は昭和63年生まれの35歳。重心児の息子は平成27年生まれの8歳(小3)。息子は妻の連れ子で、息子が生後半年の頃に再婚し親子になる。息子の傷病名は、ウエスト症候群、重度発達障害、自閉症。3年前より、息子は入居施設で暮らす。コラムでは、「息子はきっと、こんなことを考えているんじゃないか」と感じてきた内容を、息子の視点からのストーリーとして掲載。


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