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【連載<カイトの物語>】story5~ちいさな きせき~

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今日のコラムは連載企画、『カイトの物語』第4話です。重心児のパパさんである、小菊さんという方からいただいた文章を掲載しています。

あるとき、『息子からこんな目線で世界が見えていたとしたら』・・・と目線を変えてみたことをきっかけに、息子さんが何を感じて何を思って、何を伝えたいかがわかるようになってきたという小菊さん。

その思い、息子さんから感じ取った思いを発信していきたいとのことで、絵本屋だっこのコラムで<連載企画>として発信をしていってもらうことにしました。

初回の記事にて、小菊さんから発信への想いを伝えていただいています。まだ見ていない方は、以下のリンクからぜひお読みください。

<カイトの物語>第1話はこちら>>

<カイトの物語>をまとめて読みたい方はこちら>>


重症心身障害のある息子の体験談

【連載<カイトの物語>】story5~ちいさな きせき~

僕のおうちから、楽しそうな音が消えた

『トントン』『カンカン』『コンコン』も
『おーいカイトーっ!!』も   聞こえない

おうちの中が、寒く感じるくらい音が何も聞こえなくなった
父ちゃんは ため息とも 唸り声とも
なんとも言えない音を立てながら
大きく息を吸ったり吐いたりした

父ちゃん、大丈夫かな?

僕はとってもつらい検査を受けて

【おそらく障害があるのと脳で何か起きてる可能性がある】  

【重度の発達障害とウエスト症候群】  

【おそらく症状はかなり重度】

病院で僕の病気のことが、はっきりわかった

わかってしまったから…………

父ちゃんは悲しんだ
そして僕のことを、とっても心配してくれた

涙を流しながら、なんにも言わずに  僕の頭を撫でたよ
とっても優しく 撫でて

また 撫でた

 

母さんは、キッチンでご飯を作りながら泣いてる

僕は、お母さんとお父さんには背中を向けて
おもちゃをカラカラさせてね
繰り返し繰り返し同じ遊びをしながら、本当は
お母さんとお父さんの様子を
耳で 一生懸命  聞いてるんだ
目に見えるものがあると気が散って
うまく考えれない  から…………

ポカーンとしてるように見えたり、反対の方向いてばかりいるみたいに見えるけど、耳で必死に何かを感じようとしてるんだ

だから全部聞いてる
その時に理解できなくても  ずっと頭の中に置いとくんだ
聞こえるものは全部だよ…………全部さ……

そんな毎日が少し続いて、ある日のこと
母さんが 父ちゃんに言った

『保育園に伝えたから、、、』  

母さんが 父ちゃんにそういうと
父ちゃんは どうでもいいような返事をした

僕の病気のことを保育園に伝えたから、

僕は保育を断られるんだ

 

だって僕みたいな子は一人もいないし、今までも居たことがないんだもん
仕方ないよ 元気な子の邪魔になっちゃう

母さんは続けて 父ちゃんにこう言った

『そしたらね』
『園長先生が カイちゃんが居ない園なんて考えられない。ぜひ保育をやらせてほしいって』
『お母さん 何も心配しなくていいですよ、皆んなで育てましょうって言ってくれたのよ』

少し強く そして優しいほほえみで 父ちゃんにいうと

『ん!!! ん???』
『本当か?』
『それ本当か?』
『発作もあるし 何が起きるかわからないのに?』

大きな声でそういって 黙っちゃった
そしたら突然、急に すんごい笑顔になって

『よかったなー きっと奇跡を起こすんだカイは!!』
『カイト!! お前はすごいぞ!!』
『本当にすごい!! なんて奴だ!!』

僕は褒められて とっても嬉しかったんだ
父ちゃんの目には ちょっぴり涙がたまってた

『コンコン カンカン ドンドンドン』

あっ  僕のうちに、楽しい音が戻ってきたぞ……

こんなきっかけがあって、父ちゃんは元気になってくれたんだ
僕が興味を持つ音源探しが、また始まったんだよ

保育園では
『カイちゃん カイちゃん』  ってみんなが呼んでくれるんだよ
先生がいってたけど  僕は人気者だって!!!

だって 女の子はママごとで お人形さんのお世話をしたり  僕のお世話をしたり
男の子だって みんな僕の所へきてくれるし
気づいたら僕は  お友達に 囲まれてるから

とっても楽しい

僕は お友達が楽しそうにしてるのを見るのが大好きなんだ
走ったり飛んだり
キャーキャー言ってるのを見るのがとても好き
いろんな音がするしワクワクするんだ

しばらく通ってると 保育園スイッチができたんだよ  僕の好きな環境が一つ増えたんだ

お気に入りの場所や お気に入りのおもちゃが たくさんなくてもいい
僕が 『これ……好き!!』って思うとそれだけがあれば満足なんだ

脳に障害があるから、一度に二つのことができないみたいなんだけど
それでも全然困らないし 幸せを感じれるから充分だよ

先生は 毎日僕の様子を 迎えにきた母さんに報告をしてくれる
父ちゃんが 病気の治療に役立てたいからってどんな小さなことでも  データーにするために保育園にお願いしたんだ
特に 音楽や歌で反応が良かったものはどれか……とか 呼びかけに対して反応がいいもの 悪いもの……とか  どんな時に泣いた……とか

一番は 父ちゃんが心配してた
『後追い』

母さんが保育園を立ち去る時は 僕が泣き出さないかヒヤヒヤしてた
『もう無理です この子は保育できません』  って
いつ言われるんだろうって……

だって 泣いちゃうと健康な子よりも ひどく泣くから……
僕の病気が少しずつ分かってくると、父ちゃんと母さんの心配の種がいろいろ増えたんだ

でもね 僕はちゃんとわかってた

がんばったら 父ちゃんが 笑顔でいてくれるし
いっぱいほめてくれる
『カイトはすごいな~』 ってずっと言いながら 寝るまで褒めてくれる  お風呂の時も ご飯の時も 遊んでるときも
ずっと ずっと 褒めてくれる

僕はしあわせだ……
父ちゃんがくれた手作りおもちゃ
母さんのだっこ
父ちゃんのおひざの上
父ちゃんとはいるお風呂
そして保育園の先生とお友達
こんなに お気に入りが増えた

とにかく 僕は保育園にいけることになったんだ

父ちゃんとぼくにとっては、これは奇跡
僕たち家族にとっては 父ちゃんが さかさまにひっくりかえるほど  とんでもなくでっかい奇跡なんだ

がっかりしたり、
心配で眠れなかったり、
不安で泣き出しそうになったり
諦めかけてたことが突然成功したり、
泣いたり、笑ったり

僕と父ちゃんはこうやって すこしずつ強くなっていくんだ

父ちゃんと母さんは、僕が発作を起こして泣いちゃうから  夜は眠れない

まいにち まいにち

でも僕もとてもしんどかったんだよ  突然、頭の中に

【アイツ】がきて

ウニュウニュするから

【アイツ】は痛いこともする

怖くってたまらい
不安でとってもこわい
つらい病院の検査よりも しんどいお薬よりも

【アイツ】は ヤダ!!


◇父親の気持ち◇

重たい病気を宣告されるって こんなにしんどい感じなのだろうか

カイトが死ぬわけでもないのに
余命宣告ってこんな感じなんだろうかと思うほど、絶望感があった

ネガティブな受け取り方だけが先行する

保育園に行けないならそれで仕方ない
とにかくカイトの病気について何かできることがないか、打つ手がないか
精一杯やるしかない  と思いながら
感じるのは
背筋か寒いような なんとも言えない  重圧感とプレッシャーのようなものだった

男って弱いな~ と思うと恥ずかしくて情けなかった

妻はやはり 母親らしく 堂々としているように私にはそう見えていた

血が繋がってないから、こんなに心が折れたり悩むのだろうか

私はカイトの症状について  ただ専門家に委ねるのが悔しかった

病院での診断を少しでも正確なものにするために、親にできることはなんだ?!
絶対にあるはずだ!
必死に考えた

医師だって人間だ  馬鹿げてるかもしれないが、普通の親以上に真剣さを伝えれば   診断に力を入れてくれるかもしれない

1%でもいい 2%でもいいい

普段より力を入れて、良い見立てをしてほしい  そんな考えがもとになって

毎日毎日
音に関する反応
遊び方
グズリかた を必死で観察した

特に 発作については

ストップウォッチで計る
時間を正確にして
エクセルの表にして
データーを取りまくった

データを取って分かったことは

平均計算で 日に

【360回 発作が起きていた】  こと

起きていた という言い方をあえてするのは

カイトのつらさを 何もわかってないなかで 子守をしていた

それがとにかく悔やまれた
しかしそれは 回数がなんとなくわかっただけ
痛いのか
苦しいのか
ボーっとするのか
何もはっきりしていないし
誰もはっきりできないんだと思うと

なんとも説明がつかない悔しさというか、歯痒さというか、怒りにも似た感情だった。

一つ手ごたえをつかんだら勝ち誇ったように嬉しくなり

そんな手ごたえなど 難病の前では塵のようにはかない成果だと思い知らされる

そのとたんに、 落胆と絶望が同時にやってくる

そんな表現が適切かどうかは別として
モチベーションの保ち方がまったく分からなくなる

ものの見事に心のコントロールができなくなるのである
特にそうさせたのは 睡眠不足と疲労

一向に成長が見られない子を見ながら、本当に笑顔でいられるのは数時間

可愛い一面で心から笑みが出ても すぐに発作がそれをかき消しにくる

そのあとに笑顔は出せない

慰めを言えば悲しくなる

それが現実だった

私は 保育所が自ら保育を引き受けてくれたことは  奇跡 だと思う。

感謝、感動、それはもちろんあったのだが
一瞬でそんな気持ちが続かず脆くも崩れてしまう

頭の中でどう想像しても、一つの同じ空間でカイトの発作と健常児の元気な姿がうまくマッチしなかった

本当にうまく行くのだろうか…………

わかりやすく言えばそういう言葉になろうか

ある日保育所へカイトを迎えに行ったことが原因で 保育所に不信感を持ってしまう

教室の隅っこで みんなと、かなり離れた場所で皆んなと真逆の方向を向いたまま(随分探さないとわからなかったほど遠くのほうで)お座りをして  ボーっとしているカイトが目に入った

仲間に入れない浮いた園児…………と思ってしまった

やはり健常児と同じ保育なんかできるはずがないと 心の中でそんな気持ちが芽生えた

『なんで引き受けたんだ』 とも思った

歩けない、
しゃべれない、
食べれない、
ウンチにおしっこのお世話、
おまけに   発作
よだれはたくさん出るし
臭いだってある

子どもは正直だから 『カイチャンくさーい』 とくれば一気にそんな空気になって   ………………想像すればきりがない
(昔に別の園で保育士の虐待が発覚する事件があり、次女がその保育士に少し虐待を受けたであろう出来事があったことも、不信感を持ちやすくしたかもしれない)

園に私の悩みをうまく伝えてくれたのは妻であるが
カイトが年長さんになるまで、私はほとんどの行事に行かないという行動に出る

(気になるのでお迎えは時々いく たまに行事に行ってもカイトの出番をチラッと見て  後はその場を立ち去って車で待つ  ほかの子をみたくなかった)

ついていけない息子を見に行くのが嫌だった
それでもカイトが笑っていれば救われるが、
そんなにいつも笑ってることはない、

とにかく息子が楽しそうに見えなかったし、
父ちゃんと遊ぶ時のカイトの笑顔は保育園では  見られなかった
だからつらかった

家で発作と付き合って、疲労してヘロヘロな母親と過ごすよりは絶対にいいと
それだけで行かせた

私の偏見と思い込みがとんでもない間違いであったということが、この頃から4年後にはっきりする

結果は時すでに遅し…………彼にとっての大切な4年間を私は台無しにしたことになる

いつも一人で見に行った妻はどんな気持ちだっただろうか

カイトは本当に 物事が分からなかったのだろうか

記憶がしっかり残っていたら

実は脳の引き出しに記憶がちゃんと しまわれていたら
私は一人で 浮いたり沈んだりして 決めつけて

彼の大切な日々を台無しにしたのである

大人が頭で考えた一瞬の決めつけが
彼の精一杯の生き方を変えてしまったと言っても言い過ぎではない

【彼は逃げることさえできない その術もない】

【障害と向き合ってないのは 私だけ】

【本人はなにもわからないだろうから、別にいいじゃないか】

これが 私だ

 

つづく


<今回のキーワード

おうちから音が消える
耳で必死に何かを感じようとしている
一度に二つのこと
(情報処理が混雑する)
全部聞いてる
ずっと頭の中に置いとく
保育を断られる
データを取る、残す、平均値をだす
(判断基準に非常に役立つ)
(傾向がつかめる)
(子の目線が少しわかってくる)
専門家
ただ委ねるのは、親が何かを見失う
奇跡、落胆、絶望が一度にやってくる
脳の引き出し
決めつけ
障害と向き合うとは

 

この記事を書いた人

小菊

昭和44年生まれ54歳。妻は昭和63年生まれの35歳。重心児の息子は平成27年生まれの8歳(小3)。息子は妻の連れ子で、息子が生後半年の頃に再婚し親子になる。息子の傷病名は、ウエスト症候群、重度発達障害、自閉症。3年前より、息子は入居施設で暮らす。コラムでは、「息子はきっと、こんなことを考えているんじゃないか」と感じてきた内容を、息子の視点からのストーリーとして掲載。


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