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【連載<カイトの物語>】story6~大変じゃなくて、、、忙しいっていうんだ!!~

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今日のコラムは連載企画、『カイトの物語』第6話です。重心児のパパさんである、小菊さんという方からいただいた文章を掲載しています。

あるとき、『息子からこんな目線で世界が見えていたとしたら』・・・と目線を変えてみたことをきっかけに、息子さんが何を感じて何を思って、何を伝えたいかがわかるようになってきたという小菊さん。

その思い、息子さんから感じ取った思いを発信していきたいとのことで、絵本屋だっこのコラムで<連載企画>として発信をしていってもらうことにしました。

初回の記事にて、小菊さんから発信への想いを伝えていただいています。まだ見ていない方は、以下のリンクからぜひお読みください。

<カイトの物語>第1話はこちら>>

<カイトの物語>をまとめて読みたい方はこちら>>


重心児カイトの物語6

【連載<カイトの物語>】story6~大変じゃなくて、、、忙しいっていうんだ!!~

『チョロ チョロチョロ』
『ニギニギ』 『ニギニギ』
『チョロチョロ』
『ニギニギ』

蛇口から出る水が ゆっくりと空中を流れるとき
キラキラ光る棒 ユラリユラリ揺れる不思議な棒に見えて
ついつい手を伸ばして触れたくなる
そして思いっきり握っちゃいたくなるんだ
でも 何度もやってもうまく掴めない

『くそーっ ニギニギ ニギニギ』

父ちゃんは僕が喜ぶ遊びを毎日毎日探してくれる
この水遊びを見つけた時も父ちゃんは 嬉しそうにいうんだ

『これ 娘達も昔やってたなー』
『こういうの カイトもおなじなんだな』
『よし!! また一つ遊びを見つけたぞ』

父ちゃんは 僕がこの遊びのどこに1番反応してるのか知りたがって、なんだか博士みたいになっていろんな実験を始めるんだ
僕は そういう父ちゃんをみてるのがとっても好き
見てないふりしてる時もあるけど、ジッと物音を聞きながらわくわくしてるんだ

 

父ちゃんは水の流れを大きくしたり小さくしたり
水が落ちるところに物を置いて、色んな音を出したり
音がしなくなるようにしてみたり
水の位置を 右にやったり左にやったり
すっごく高いところからやってみたり
僕に当ててみたり
この遊びから僕が水の音が大好きなんだって発見したの

お風呂から上がった父ちゃんは、僕を膝の上に乗っけてスマホを取り出した
YouTubeを開いて次から次へと
いろんな水の音を集めた動画を再生する
僕の顔や仕草をジッとみながら
延々と流し続けるんだよ

おひざの上以外にも、僕が1人で遊んでる時、お風呂の時、機嫌が悪い時、楽しく笑ってる時、泣いてる時、いろんなシーンで聞かせる
寝るまでずっとだよ

音に反応して僕の手が止まったり動きが止まる
顔に笑顔が出る
ジッと聞き耳をたてる
で一応、カイトが興味ありそうなモノとして
とりあえず画面をタップしてその動画を保存する

そしてそれを、一つ一つ集めてまとめる
集めた動画をいろんなシーンで流しながら
また僕の反応を見る

その中から、さらに反応がいいモノを選んで
お気に入りとして保存する

お気に入りで集めた動画をよけといて保存してまとめる
まとめた動画をいろんなシーンで流して
また僕の反応を見る

そんな作業を繰り返し繰り返し、毎日毎日続けるんだ
まるで父ちゃんは 何かに取り憑かれたように必死になって延々と続けるんだ

そんなふうにして、いつかけても僕が腰をコクコクさせて踊る
【僕の大好きな音楽や遊びがやっと見つかるんだ】

 

毎日毎日そんなことを繰り返して
6年間で
音楽が約10曲
遊びがほんの数個

だから 父ちゃんは 本当に喜ぶモノを見つけた時は
大はしゃぎするくらい喜ぶ
僕から見ると次から次へと僕を喜ばせてくれる父ちゃんは
博士なんだ

僕が楽しい時、座ったまま腰を前後にコクコクさせて踊るんだ
そんな表現ができるようになったのは父ちゃんが見つけてくれた素敵な音や音楽のおかげなんだ

僕ら 難病や障害がある子は思った通りに自分を表現するのがとても難しいんだ
心の中で感じたことを、そのまま外に出すのがなかなかうまくできないだよ
聞いた音や見た映像が心の中にじんわり染み込んで、それが表現として出てくるのはずっとあとになってから
だから、普通の人から見ると僕たちのタイミングはちょっと不思議に見えるんだよね

そんな僕たちの生活は大人にとってとても大変なこともあるんだ
例えば僕がぐずると発作が出やすいってなんとなく感じてた父ちゃんたちは
お家で、僕がよく見るテレビ番組の『コーシーのDVD』をエンドレスでかけてくれるんだ。 ずっと  ずーっと

でもそんな状況がずっと続くと大人は耐えられなくなることもある
母さんも体調がいい時は一緒にみたり歌ったりしてくれるけど、なかなかそうもいかない

『もう限界 頭がおかしくなりそう』

母さんは静かにそう言うと黙って2階に行っちゃったんだ

僕は大丈夫なんだけど、大人って会話が一方通行になると、すごく疲れるみたいだね。

 

父ちゃんはずっと悩んでいたことがあった。

「体重も軽いから抱っこしてもそんなに大変じゃないし、泣くって言っても駄々をこねて泣きわめくわけでもない。比較的おとなしい子なのに、どうしてこんなにお世話が疲れるんだろう?」
「病気と言っても、体に管が入って寝たきりの子に比べればずいぶん楽なはずなのに、どうしてこんなに疲れるんだろう?」

「いろいろ大変だ」というだけではうまく説明できなかったから、父ちゃんはずっとそれを考えていた。この頃から最近までずっと考え続けて、やっと少しずつ納得がいく答えが少しづつ出てきたみたいだよ。

7年間かけて……

 

障害と向き合うっていうのは、障害と共に生きていくってことなんだよ。

障害や難病と共に生きていくってことを現実的にいうと…

①排泄について

オムツの確認
手、足で股間をイジってしまうので手、足を動かないように固定する
特にウンチの場合は拭き取る時に暴れるので足を固定
足を固定したら手が股間に伸びてくるので手も固定
場合によってはお風呂に連れていって洗う
ウンチがついたまま連れていくので抱っこ状態の足が宙ぶらりん
足がブラブラなので風呂場に到着してから座らせるまでがすんなりいかない
その間にいたるところにウンチがついてしまう
オムツを履かせる
すんなりはできない
ジッとしないので足を突っ張ったり、暴れる

この作業に 早くて15分~20分 × 一日中

②食事について

口の中が過敏症なので、熱い冷たいが人の数倍もしくは数十倍感じる
ご飯に湯気が立っているとNG
ザラザラ、モサモサが人の数倍もしくは数十倍
苦手な粉のお薬が、朝晩
一度苦さやザラツキを感じたら食事を受け付けなくなる
恐る恐るお口に運ぶ
お茶、のタイミングが分からない
「お茶が欲しい」の意思表示ができないので終始怒って
食べなくなったり、ご機嫌だったりの繰り返し
噛んで飲み込むことが苦手なので、ほぼ丸のみ
喉に詰まらせると吐く
吐いて初めて、うまく飲み込めなかったとわかる
ひどく吐くと食事をしなくなる

この作業に40分

親は食事をとる暇もなく、食事が終わればオムツ
オムツが終われば、発作が出るので目が離せない

食事前後、眠くなった時 発作が頻発する

③入浴について

入浴中は発作が出やすい
入浴後は発作が出やすい

④買い物、お出かけについて

出かけるときは、車に乗せるのに 15分
車から降ろすのに        15分

イコール、一件買い物に行くのに目的地に到着前後15分15分、介助の時間が含まれる

晴天ならばまだまし、雨天は地獄

 

僕はお出かけ大好き
お風呂大好き

でも大好きなことをすると発作が出るんだ
こんなだから、父ちゃんも疲れるんだよきっと

僕の病気はウエスト症候群と重度発達障害
僕、きっと長生きできない
神様がそう言ってたよ
心臓はいつもドキドキしてるし、「アイツ」が頭の中でいたいことするし
いつも体の中は、いっぱいいっぱいなんだ

 

この頃の僕の発作は、コックリコックリって頭を前に倒すような感じだったけど
それは段々ひどくなって、座った状態から前の床に頭がついちゃうくらい
腰から 「ガックン」ってなっちゃうんだ
「ガックン」ってなった後は横に体ごと倒れちゃう

最近はね、体が引きつって後ろに「ゴーン」って倒れちゃう

今は「アイツ」がやってくるとね、
「あっち行け!!」って頭を左右に振るんだ
でも「アイツ」に負けちゃう

だけど小さいときは出来なかったのに 「あっち行け!!」って
できるようになったんだ。

いつかきっと、「アイツ」に勝って、にっこり笑って父ちゃんに見せてあげるんだ。

父ちゃんは、飛び上がって喜ぶよ
僕を力いっぱい抱きしめてくれる

きっと………………


◇父親の気持ち◇

【今】を充実させるのに精いっぱい
楽しませることを見つける作業が延々と続くなか
「俺は何をしてるんだろう」という謎の疑問に耐えられなくなり
何度も投げ出すけども、「あきらめちゃだめだ!」という変な
決心が、どうにか自分を支えてくれたという感じ。

この頃、人から障害や難病って大変なんでしょ?と聞かれた場合、
私は返事に困っていた。
今は明確に返事ができる。
生活の中で、上記の時間と課題を坦々とこなすだけなのだから。
大変という言葉は使わない。

【大変というよりも 忙しい というほうが正しい。】

カイトが8歳になる最近、ようやく私も少し説明ができるようになった

障害と向き合うというのは、障害や困難と戦う日々ということです

 

(以下 海外の講談引用)

それが自分の成長につながるのですが

しかしストレスと向き合っていると
やらなきゃいけないことができなくなることもある

コップ1杯の水を数分間持っていても別に何も起きない
1時間持っていると腕が少しずつつらくなる
一日中持っていたら、腕はしびれて使えないと思う
グラスの中身は変わっていないのに長時間持っていると、ドンドン重く感じる

人生におけるストレスはグラスの水と一緒

短時間ストレスを感じてもたいしたことではない
長時間考えているとドンドンつらくなる
もし一日中ストレスを感じていたら脳がマヒして何もできなくなる

だから、時には コップをテーブルに置くことを心がける

その最悪な状態を24時間365日続けること……
それが障害と付き合って生活するということ

 

私はそれが現実だと思う

ただし、気持ちをコントロールしてうまく心にゆとりを作っていくことは
障害児の親が持つ大きな課題のように思う
少しづつ気持ちに余裕を持たせたり考え方を変えて、モノの捉え方を変えたり
することができるようになっていく

私は、障害や難病に関わる物事に答えはないと思う

【正しいか誤りかもない】

不可能が可能になっていくこともないなか、

【克服することが一つ、また一つ増えていく】
それが喜びとなるだけである

その一つ一つが、非常に小さいことであることのほうが多い
「アイコンタクト」がとれるようになった
「返事」のような声を出すようになった
のように…………
本当に 些細な事が彼らにとって、親にとって かけがえのない出来事

 

音源探しや、好きな音探しは 私にしかできないとうぬ惚れることにした
父ちゃんにしかできないことだから 生きてなきゃいけないんだ
そう思うことにした

この頃からカイトは、奇跡を沢山起こす
こんなことが奇跡……
というようなことでも私たち家族にとっては奇跡なのだから……

ただし 親が声を上げる 矢面に立って発言してみる
そうして はじめて 不可能が可能になる時がある
それだけは述べておきたい

 

つづく


伝えたいことがうまく伝えきれているとは到底思えませんが、引き続き
【カイトの物語】
を通じて 障害児とその家族の本当の姿を知ってください
そして、社会にはこういう家族もいるということを、伝えてみたいのです。

金にもならない、ドラマにもならない、障害者や家族の話は本当は身の回りにたくさんあるのですから、、、、

 

この記事を書いた人

小菊

昭和44年生まれ54歳。妻は昭和63年生まれの35歳。重心児の息子は平成27年生まれの8歳(小3)。息子は妻の連れ子で、息子が生後半年の頃に再婚し親子になる。息子の傷病名は、ウエスト症候群、重度発達障害、自閉症。3年前より、息子は入居施設で暮らす。コラムでは、「息子はきっと、こんなことを考えているんじゃないか」と感じてきた内容を、息子の視点からのストーリーとして掲載。


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