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【連載<カイトの物語>】story7~悪魔の子~

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今日のコラムは連載企画、『カイトの物語』第7話です。重心児のパパさんである、小菊さんという方からいただいた文章を掲載しています。

あるとき、『息子からこんな目線で世界が見えていたとしたら』・・・と目線を変えてみたことをきっかけに、息子さんが何を感じて何を思って、何を伝えたいかがわかるようになってきたという小菊さん。

その思い、息子さんから感じ取った思いを発信していきたいとのことで、絵本屋だっこのコラムで<連載企画>として発信をしていってもらうことにしました。

初回の記事にて、小菊さんから発信への想いを伝えていただいています。まだ見ていない方は、以下のリンクからぜひお読みください。

<カイトの物語>第1話はこちら>>

<カイトの物語>をまとめて読みたい方はこちら>>


【連載<カイトの物語>】story6~悪魔の子~

太陽が西から東へと静かに流れる間、男たちは獲物を求めて森をさまよい、遠く離れた寝床がある木々の森へと帰路についた。彼らの背中には、日の光が長い影を落とし、夕暮れの美しさを映し出していた。

一方、女たちは子どもたちが目の届かない場所へ行かないように気を配りながら、男たちが狩りから戻る頃に合わせて寝床を整えるのだ。
彼女たちは木々の間に柔らかな藁を縛りつけ、家族の安息の場所を作り上げる。

周囲には、時折響くけたたましい鳥の鳴き声と、可愛らしい小鳥のさえずりが混じり合い、ジャングルの厳しさと美しさを同時に伝えてくれる。猛獣が忍び寄る隙もないほどに、女たちと子どもたちの幸せそうな声が響き渡る。その声は、ジャングルがまるでこの部族だけの楽園であるかのような錯覚をもたらした。

その中で、群れから少し離れたところに、ゆっくりと歩を進める一人の女がいた。
女は赤子を大切に抱きしめ、時折涙をこぼしながら歩を止め、再び歩き出す。
その姿は、ジャングルの穏やかな息吹に深い感情を重ね、周囲の木々も彼女の悲しみを察したかのようだった。

群れから遥か遠い所には、輝く川が静かに流れている
ジャングルで生きるすべての生あるものにとって、神と崇める太陽に次ぐ神聖な場所がこの川だった。
水は命の源であり、川はその象徴であった。

女は川のそばで立ち止まり、微動だにせず大きく息を吸っては吐き出した。澄んだ水面には女の涙がひとしずく落ち、波紋を描きながら静かに広がっていった。女は流れる涙をそっと拭い、再び大きく息を吸い込んむ。
川のせせらぎはまるで優しい子守唄のように、女の心を静かに包み込んでいた。

赤子は母親の胸の中で嬉しそうに笑う
女の顔から涙が消え険しい表情に変わった
赤子をそっと掬い上げるように頭上高く抱えるや否や
そばにあった大岩に赤子を叩きつけるように投げつけた

鈍い音と共に、何かを察したかのように周囲の鳥たちが
けたたましく一斉に飛び立つ
そしてあたりは一瞬静まり返った

女は赤子を抱き上げ、叫び声を上げながら嗚咽を繰り返し
静かに川の中へ進んだ
女の腰のあたりまで水が来ると、赤子を水で優しく洗い
そのまま腕を伸ばし 手を離す
赤子は浮いているのか沈んでいるのかわからない
重たい木の葉のようにゆっくり回転しながら川に消えて行った

女は踵を返してバシャバシャと水しぶきを上げながら川から上がった。
部族の集落の方角へ歩を進めると
硬く唇を噛み締めた血が頬を伝い流れた
女はそれを手で拭っては、また噛み締めて血が流れ続けた
それでも女は歩を止めなかった

集落では男たちが戻り、祭壇が作られ儀式めいた集まりが始まっている
女は一度も立ち止まらずに祭壇へ向かうと、老婆が木々で作られた器に真っ黒な汁のようなものを入れ、無言で女に差し出す
女は祭壇に座りそれを受け取ると大きく深呼吸をして
ゴクリッとのみ嗚咽と共に吐き出した
何度も繰り返し飲んでは吐く
女の唇からはまだ血が流れている

延々と部族の歌が歌われ、天を仰いで踊り明かした男たちは世が明ける前に寝床に入っている
女子供たちもそれぞれ家族のもとに帰ったのだろう
あたりは誰も居なくなっている
祭壇には女が残され 老婆と共に座り込んでいた
微動だにせず大地を眺めて何時間経ったのであろうか
老婆が女に背を向けたまま、何やら囁いて立ち上がり森の中へ消えていった

朝日と共に辺りには霧が立ち込め、不気味なのか清々しいのかわからない、なんとも言えない空気を作り出す

霧がうっすらと大地に吸われていくと共にジャングルには神々しい光が入り込んでくる

突き刺すような朝日が大地に届く頃には女の姿は跡形もなく消えていた

集落の全ての人がそれに気づいたが誰1人探そうとしない
老婆は空を見上げてにっこり微笑んで涙を拭って小さな声でこういった

お前は そうすることを選んだのか……そうか……

その笑顔はまるで神のようだった

end


この物語の一部は私の想像で作られたものだ

ある国の部族では障害児が産まれると、
【悪魔の子】
が部族を滅ぼすという理由から、川に捨てるかジャングルの中で捨てるか、どちらかの方法でその子を抹殺するというのだ

厳しいジャングルの中を移住する部族にとっては、健康でない子は、足手まといになり部族全員の安全を脅かすという考え方が今だに残っている
母親は我が子を捨てに行った後、戻ってこない場合もあるという

私はこの話を知った時に、愕然として言葉が出なかった
反論する言葉さえ見つからないまま呆然とするしかなかったのである
「衝撃とショック」と同時に「なるほど」という変な感情

そして

【そんなことがあってたまるものか!!】

と私は怒りを覚えた

この部族の話を知ってから、私は息子に対する、、、障害に対する気持ちが
変わった。

正直に言えば、前を向いて前進する、原動力のようなものをこの話から得た。

この後にも、前進する原動力になるきっかけというか、転機のような出来事が
あるのだが、ひとまずは

【悪魔の子】

の話から述べておきたいと思う

反骨精神というべきか、うまい言葉が見つからないが
一つまた一つ 壁を乗り越えるのに必要なエネルギーのようなものがなければ
歩を進めることさえできないのである。

壁を乗り越えたつもりでいても、疲労や ふとした時に
【悪魔の子】

の話は、「まんざらでもいないのかもしれない」
「シンプルに考えれば、生きるためには部族はそうするしかないのかもしれない」

と容認してしまいそうになる

自身が強く生きるために、息子が

 【生きる意味は必ずある】

私はそう信じて前進する

難病や障害というのは 人間にとってそびえたつ山のように大きい
人はそれぞれ色々なものを背負って生きていると思うが
人間の力ではどうにもならないことに立ち向かうのは
意味の分からない勇気が必要なんだ

このようなことを公表して、何を分かってほしいんだ
何が言いたいんだ

ただ私は、、、、

【仕方ない】  という一言で前進したくないだけだ

障害に関して公表することに賛否両論あると思うが
私たちは、生きる意味を 大声で叫びたい
黙っていては何も始まらない

現在でも 前進するたびに道を見失いかける
だから 息子の分まで 声を出してみたい

ある部族の話【悪魔の子】を知って以来

【負けてたまるか】
【そんなはずはない!!】

そういう気持ちで大きく前進できたことだけは事実なのだから
事実をそのまま声にしてみたい

ただそれだけである

 

つづく

 

この記事を書いた人

小菊

昭和44年生まれ54歳。妻は昭和63年生まれの35歳。重心児の息子は平成27年生まれの8歳(小3)。息子は妻の連れ子で、息子が生後半年の頃に再婚し親子になる。息子の傷病名は、ウエスト症候群、重度発達障害、自閉症。3年前より、息子は入居施設で暮らす。コラムでは、「息子はきっと、こんなことを考えているんじゃないか」と感じてきた内容を、息子の視点からのストーリーとして掲載。


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