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【連載<カイトの物語>】story9~衝撃~

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今日のコラムは連載企画、『カイトの物語』第9話です。重心児のパパさんである、小菊さんという方からいただいた文章を掲載しています。

あるとき、『息子からこんな目線で世界が見えていたとしたら』・・・と目線を変えてみたことをきっかけに、息子さんが何を感じて何を思って、何を伝えたいかがわかるようになってきたという小菊さん。

その思い、息子さんから感じ取った思いを発信していきたいとのことで、絵本屋だっこのコラムで<連載企画>として発信をしていってもらうことにしました。

初回の記事にて、小菊さんから発信への想いを伝えていただいています。まだ見ていない方は、以下のリンクからぜひお読みください。

<カイトの物語>第1話はこちら>>

<カイトの物語>をまとめて読みたい方はこちら>>


重心児カイトの物語9話

【連載<カイトの物語>】story9~衝撃~

腕を組んで、あぐらを描いて、おくちを一文字にして、
眉間にギュッ!ギュッ!ギュッ!ってシワをよせて
大きな息を吸ったから

次は きっと

ハ〜〜〜ってはくんだ……

と思ったら

ゆっくりとそしてなが〜く

「んーーーーっ!!」

って言ってる

おかしいな、これなんだろう

息を吐くと
「はーーーっ」
て聞こえるはずなのに

ぼくは 父ちゃんの顔を

ぽっか〜〜ん

って眺めてた

いまおうちの中では

ずっとリピートをくりかえすDVDと
父ちゃんの へんな唸り声と
ぼくのぽっか〜〜〜ん     だけ……

それ以外は、なんにも聞こえないしなんにも動かないから、まるで絵本の中にいるみたいだなって思ったんだ

ぼくのぽっか〜んのお口から
よだれが びっ!よ〜んつるつる〜ポタリ
びっ!よ〜んつるつる〜ポタリ
っておちるけど、それが唯一動いてたものかな?

へんな音だしてさ
父ちゃん さっきからずっとこうやってるんだ

実はね 父ちゃん パソコンでDVDを見てたんだ
それを見てから ず~っと 画面の前に座り込んじゃって
腕を組んで う~~って うなってる

何度も何度も繰り返し見てね

父ちゃんが見てたDVDの名前は

『僕が 飛び跳ねる理由』

っていうお話だ

ぼく 本当はね モノを記憶するのが得意なもんだから
『僕が飛び跳ねる理由』 のお話はすぐに覚えちゃってるのにさ
父ちゃん お酒飲むと 頭悪いからね~
何回も何回も 嫌になっちゃう

まああれあだね 同じ遊び繰り返すのは 僕は父ちゃんに負けないよっ!

アッ 父ちゃんぼくのまねしてあそんでんだな?
だから何回も同じことしてるんだな~~っ!!!

アッ また繰り返した
アッ また唸った

ははっ! はははっっ!
楽しいかも~!

父ちゃんの 顔がいちばんおもしろいや!!

あれっ!!!

あれれっ!!!

父ちゃんが小さい声で何か言ったぞ!

「おい あら あれ へ~っ  そんな、、、、、、、、」

父ちゃん よく聞こえないよ なに? なんていったの?

「まちゃか、 じょ~ったんじゃろ~」

何が~っ? ねえねえ父ちゃん どうしたの?

もしかしたら…………
………………父ちゃんはぼくみたいに
ぽっかーんっってなる病気になった?

まえから あんまりにも おばかな父ちゃんをみて……
ぼくとおなじかもっておもってたからさ
ひょっとしたら…………

うぅ~ん 大丈夫だよ父ちゃん
もしそうだとわかっても だいじょうぶだよ、ぼくぜんぜん びっくりしないからさ

父ちゃん…………母さんには言わないで内緒にしといてあげるし
ぼくの おもちゃ こっそりだけど 母さんに見えないところで貸してあげる

そうしないとさ

みんなに秘密がばれちゃうから

ばれちゃうとさ あれだよ~~っ? 父ちゃ~ん

おっ   むっ   つ!

父ちゃん体でかいからさ~っ
かくすのたいへんだよ~っ

ぼくのピンボールのおもちゃ………………あれ 人前でできないよ~っ
どこでもするから楽しいのにさ

つらいよ~~っ  あのおもちゃどこでもできないってさ
とっても辛いと思うだからさ なんでも馬鹿正直に言っちゃダメだよ
内緒にしとかなくちゃ
これからどうするか ぼくが考えるから
正直になんでも言っちゃダメ
いいかい? 父ちゃんわかった??あっ そうだぼくたちにしか感じないものとか神様と話ができるやりかたも教えてあげるってのもあるけどぼくには教える手段がないんだっけ

ん~~~~っと  え~~っと
父ちゃんにも神様とお話ができるようにしてあげて!?
って 神様に頼んでみるよ

アッ! でもあれだよ父ちゃん
神様は 天使か ぼくらみたいな子か 特別な子 にしか取引はしない
って言ってたっけ

うん間違いない確かにそう言ってた
いやまてよ
神様は とっても優しいけど ちょっとお口が臭いところが
父ちゃんに にてるな
父ちゃん ぼくと変わらないくらい あたまが単純でこどもだろ?
とてもやさしくて お酒でおくち くさいっしょゴリラに 天使の羽と輪っかを頭にのせて………………
手に花束をいっぱい持って………………
ん……っ   ん……っと
うん!スキップしてさ
「天使だよ~ん」って言ってれば 天使にみえるときもある??
みえるひともいる??そうだよ 神様もこんな父ちゃんなんです 一度みてくださいって頼めば

わ た し と
は な し が で き る よ う に し て あげよう~~っ!!!

ってさ

うん!
うんうん!

きっと うまくいくよ

うん!!!
うんうんっ!!!
きっとうまくいく!!

はははっ
きゃはっ

そうぞうすると…………
ぼく 父ちゃんだいすき~~!!

あれ?

父ちゃんがなんかいいだしたぞ?!

『マジか!!』
『カイトそうなのか?』
『そんな、、、、、、』
『カイト!』
『凄いぞー  この話は凄い』
『ぜーんぶ辻褄が合う』
『合う合う』
『だとしたら……嘘だろーー凄いぞカイト』

父ちゃんの目からなんか落ちてきた

泣いてる……
父ちゃん
泣いてる……

涙を大きな手で

バサッ!!
って拭った父ちゃんは

父ちゃんが

「カイトはこういう気持ちだったのかって一瞬で理解したぞ」

っていいながら、DVDの中のお話を聞かせてくれた

『僕が飛び跳ねる理由』のお話と父ちゃんのおはなしを説明すると こうなんだ

※ここからはDVDの原作者の話と、個人の捉え方が混じった話になる
※ここからの話に登場する 「僕」 はカイトではありません

父ちゃんは障害がある子が書籍を出すことがどんなに難しいかなんて考えたことがなかったし、わかるはずもなかった

障害者の頭の中なんて全くわからないし、説明できる人もいない
でもこの人(著者)は、はっきり言ってる
障害児は目で見たもの 耳で聞いたもの 感じたもの
色、光、人の顔、見たもの全部が一度頭に入ってきて 
それがなくなることは ない

全部記憶してると言ってもおかしくない
聞こえた音、声
鼻で嗅いだ匂い
全部覚えてる
でもそれは頭の中で一つの 【・】てん となって
それぞれがバラバラになっちゃう
頭の中には無数の 【・】てん が存在する
【・】てん と 【・】が線で繋がると言葉になったり
表現になったり
感じたことになったりしてくれる
でもそれは自分ではできない
うまくいく時もあるけど ほとんどはうまくいかない
だから、会話にならない
友達と友達が話してるように、うまく会話ができない
そのかわり、勝手に 叫び声や 唸り声になっていつのまにか変な声が出ちゃってる

『あっ また勝手に叫んだ』
『あっ また勝手に声が出てる』
『僕は、今こう言いたいんだ』
って思うのに
うまく 【・】てん と 【・】てん
が繋がらないから会話にならないまま笑われてる
ってことが全部わかってるんだ

だから……

つらい

そして……

こわい

僕が傷つくことが怖いんじゃない

みんながどうなっちゃうのか

それが心配になって

人と接触するのが

こわい

僕の頭の中には

いつも

こわいって思う気持ちがいっぱいで

それが

こわい

いちどにとてつもないじょうほうが頭の中におしよせてくる

はいじめてみたもの はじめてきいたおと はじめてかいだにおい

みたことがあるもの きいたことがあおるおと かいだことがあるにおい

みんなはそれを 一瞬で処理できるけど 僕はちがう

「これはみたことある、あの音だ」

てならなくて

「ただあたまにはいってきたおと」
「これなんだったっけ……」
「におい?……くんくん……ちがうな」
「ん……っと   ん……っと」

「アッ  おもちゃがある」
「これすきなやつ」

「あっ!……あの音だ!!!」
「そう!   あの音!」
「わーっ   あの音だ!」

って そこでつい笑っちゃう

そのときにはずいぶん時間がすぎてる

あれ!  みんなが不思議そうにみてる

だって

もう音のことなんか とうの昔に過ぎてるし時間がたって笑ってる僕はずれてるからさ

みんなは変に思っちゃう
なんで笑ってるの?…………………………僕はそれが全部わかってる
ずれてるのも
僕が笑った時には、
悲しいお話になっていたり、
笑っちゃいけないお話になってることもある

それも僕は全部わかってる

自分で「笑っちゃいけないんだぞ」言い聞かそうとするけど
何かを考えて、思い通りにしたいって思うと
なぜか

叫んだり 飛び跳ねたりしちゃう

それも全部僕は分かってる

グルグル グルグル そうやってるうちに
また情報が押し寄せてくる

だから

こわい

何を見ても

何を聞いても

何か におっても

とりあえず不安なんだ

僕が そういうときに一番大好きなことばがある

それは

【大丈夫だよ】

って言葉

そして僕が一番幸せな時は

【みんなが笑ってるとき】

それだけ

僕が楽しいからじゃないんだ
みんなが笑顔でいると
僕はこわいって思わなくて済むんだ

それだけさ

僕の頭の中はいつもこうなんだ

――障害がある子のお父さんお母さんが我が子に徹底的に向き合ってるなかで、

ある年配夫婦の父親はこう言った

『私たちの夢は、この子が見えている世界がどんなものかを知りたい。見てみたい』

『誰にも 見えない、わからないことだらけで この子がいったいどう感じてどう苦しんでるのかこの子の目線で私たちも見てあげたい』

『ただそれだけ』

 

※DVDに出会った当初はただ 【衝撃】 で、頭が真っ白になった感覚を今でも忘れない。


繰り返し見ているうちに、「カイトがこう見えていたら」「カイトが少しでもこう感じていたら」という感じに 目線が変わっていく。
自分のカイトに対する気持ちや障害に対する考え方が広がったというよりは、見える世界が広がる、目の前の道が草を分けるように広がる感じがした。
そして、一番衝撃だったのが、すべての辻津が、ものの見事にあっていく様をこれから目の当たりにさせられる始まりでもあったこと。
具体的に何がどう辻褄が合っていき、私の中でいろいろなことが証明されていくのか、それを説明できる。
すでにそのような経験をされて、乗り越えてきた人には通り過ぎた道で、経験済みの体験であろうが、少なくとも私にとっては 奇跡に近い 【衝撃】 である。

妻は、なかなか私の見解を受け入れることができず、悩みすぎてそういう見方をする人もいる”くらいに、聞き流すに至ったが、現在では信じざるを得ないでいる。

私は 見る角度 見る目線 で大きく得るものが違うと信じている。

息子(障害)に本気で向き合うということが、いろいろな方法があってよいとも思う。
本気で その目線で 見てみるかどうか
…………ただそれだけの違いで、得るものに大差が出る。
【本気でかいた汗は絶対に裏切らない】
【本気で汗をかいてみないと絶対に見れない景色が必ずる】
私の信条である。

 

 

つづく


映画『僕が跳びはねる理由』のもととなった書籍の日本語翻訳版


この記事を書いた人

小菊

昭和44年生まれ54歳。妻は昭和63年生まれの35歳。重心児の息子は平成27年生まれの8歳(小3)。息子は妻の連れ子で、息子が生後半年の頃に再婚し親子になる。息子の傷病名は、ウエスト症候群、重度発達障害、自閉症。3年前より、息子は入居施設で暮らす。コラムでは、「息子はきっと、こんなことを考えているんじゃないか」と感じてきた内容を、息子の視点からのストーリーとして掲載。


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